命令と自由と


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口をへの字にするWebデザイナー

自衛隊に入って、一番最初に感じたことは、
とにかく、自分で考えて行動するという事が無かった。

実際に、部隊に配属されてから、そうでもなかったが、
特に、教育隊にいる間は、それが顕著だった。

教育隊では、ラッパとともに動き、命令や号令の下に行動する。

そこに、個人の考えとか自由は、基本的には無かった。

最初の頃は、命令とか号令に対して、ひどい嫌悪感を持った。


そうは言っても、自衛隊という組織にいる以上は、命令は絶対だ。


しかし、自分の自由や、自発的な考えを奪われて、感情のない
ロボットのようになる気がして、常に反発心で一杯だった。

普通は、世間一般では、今勤めている職場もそうだが、
ある程度のルールの範囲内で、自発的な行動を求められる。

自分で自由に考えて、自分で自由に行動し、自分で責任を取る。

まあ、責任はともかく教育隊では、作業に対して、
工夫とか効率とかは、絶対に許されなかった。

例えば、「早く目が覚めたから」といって、起床ラッパのなる前に
起きて、身辺整理なんてもっての外だ。

「今日は疲れたから、明日に備えて早く寝よう」も、許されない。

命令やラッパが鳴る前に、何か行動したり、準備は一切駄目だった。


命令という事に関して、今でも思い出す事がある。
教育隊に入ったばかりの頃だった。


ちょっと肌寒かった日に、風邪を引いたら大変だと思い、
課業終了後、少し長めの私物のタオルを首に巻いて過ごした。

洗濯の順番を待ち、自分の番が近いので洗い物を持っていこうと、
廊下を歩いていた。

その時、班長とすれ違った。

「琴峰二士!ちょっと待て!」

班長の大声で、その場に直立不動の姿勢をとった。

「その首に巻いているものは何か!」

班長は私の襟首からのぞいているタオルを指して訊ねてきた。

「はい、少し寒いから風邪を引かないようにタオルを巻きました」

そう答えた瞬間に、班長に怒鳴られた。


「お前は自衛隊を舐めているのか!」

正直、意味が解らなかった。

自分の体調管理をして何が悪いのか、タオルの首に巻いたことが、
何が悪いのか?

当然、お決まりの連帯責任で、班員全員集められた。

班長の言い分は、こうだった。

「命令すら、今は満足に出来ない新隊員は、工夫なんてするな」

「まずは、100%命令を実行できるようになってからだ」

「たかがタオルと思っていたら、とんでもない事だ」

「一事が万事、たまたま、タオルという形で現れただけ」

「寒いからタオルを巻く、気持ちは解る。だが、その手の
勝手な判断が、時として、部隊を窮地に陥れる時があるんだ」

その時は、正直いって不満しかなかった。

なぜ、タオルを巻くことと、部隊の窮地が何の関係があるのか?
タオル一つで戦争になったら、負けるのか?

そんな不平不満が頭の中をぐるぐる渦巻いていた記憶がある。

班長の言い分は分からなくもない。

「でもね」・・そう思いながら、不満を飲み込んだ。

だが、後々の訓練で、班長のいう事が分かり始めた。

訓練が厳しくなってきて、要領の良い奴が怪我をしたり、
支給された備品(官品)を無くしたりした。

全ては、言われたことを守らず、勝手な判断をしたためだ。

その度に、私の首のタオルを指さしながら真っ赤な顔をして怒る
班長の顔を思い出した。

そして、面倒だなと思って、工夫(楽)したかった事は、
結局は重要な事が多かった。

とても逆説的な考え方だが、当初は、命令や号令によって、
自分自身の自由を奪われたと考えていた。

しかし、命令や号令によって、本当の自由を考えさせられ、
却って、自由になった。

この事は、教育隊を終え、部隊に配属された後も、
何かあるたびに、思い出したりした。

部隊では、教育隊とは打って変わって、規則の範囲内ならば
行動に関しては基本的には余り言われることはなかったからだ。

結局、教育隊では命令とか号令とかの名を借りながら、
「守・破・離」という事が言いたかったのだ。

それが、本当に理解できたのは、自衛隊を辞めてから
何年も経過してからだった。

どの分野でも言えることだが、結局は、いかに早く

ルールやセオリーをモノにし、それから自分で考えて、

オリジナリティーをだした者だけが、結果を出している。

 

目先の自由や、自分のやり方にこだわった者ほど、

最初は良くても、結果的には伸び悩んでいる。

 

私が、仕事で、初めて後輩を指導しなければならなくなった時、
あの時の班長が言いたかったことが良く分かった。

今は、班長の顔を思い出しながら、いつも後輩に言う言葉がある。

「まずは、基本やルールを覚えて、それを守ってからにしようね」

「結局は、その方が後々に自由になるし、楽できるよ」と。


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管理人 琴峰 一歩      プロフィール

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現在、アラフォーの年齢になった。

10代は、いじめや人間関係に悩み、
苦しみ続ける孤独な毎日だった。

20代では、不安定な経済力や仕事で苦労し、不安な毎日を過ごした。

30代に入り、無職も経験した。
本当に人生を変えたかった。

人生を変える為に、やりたい事、 挑戦したい事は沢山あった。

ただ、それに反比例して、
どうしようもなくお金が無かった。

だから、お金を使わずにできる事。

自分自身の考え方を変えた。

まず、悩み続けた不安定な経済力、雇用関係が変わった。

次に、苦手だった人付き合いが
嘘のように活発になった。

長い間、変わらなかった現実が
突然ガラリと変わった。

今は、新しい人生の夢に向かい、
挑んでいる。

そして、それは少しづつ実現中だ。

 

 

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