夢や目標、持ち続ける事の困難さ


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積ん読を処理する非読書家

自衛隊に入ったのは、大学に進学するためだった。

大学に進学するために、可能な限り貯蓄し、
一人暮らしするためのノウハウを身に着ける目的があった。


だが、そんな考えは、入隊していきなり吹っ飛んだ。


とにかく、毎日が辛かった。

最初の1か月なんて、辛くて死にそうだった。
「何で自衛隊なんて選んだんだ!」

自問自答の毎日で、もしもタイムマシンがあるなら、
過去の自分に自衛隊なんて止めろ!と伝えたかった。

教育隊の期間が、残り最後の1か月になった頃の事だった。

 

その頃は、毎日が疲れ切って、大学進学を諦めかけていた。

ある日、22時の消灯間際に班長に教官室に来いと呼び出された。

今でも、その時の事は覚えている。

班長に教官室で、いきなり問いただされた。

「お前は大学に進学希望なのか?」

そう聞かれた。

「はい、進学したかったのですが、お金が無くて諦めました」

「だから、ここでお金を貯めて、自衛隊を辞めたら大学に行きたいです」

そう答えた。

普段、厳しい顔しか見ることのなかった班長が優しい顔だった。

「よし、本日より、琴峰二士に延灯の許可を与える」

「ただし、人より睡眠時間が少なくなる。
延灯をするかしないかは自分で決めろ。」

そういって、教官室にある机を当てがわれた。

参考書や勉強道具は班長が用意してくれていた。

本当に嬉しかった。

赤の他人の夢に、ここまでしてくれる班長に感謝した。

時間はハッキリ覚えていないが、確か1時間だと思ったが、
消灯後に、希望すれば勉強することを許された。

毎日が辛かったが、勉強できることが嬉しかった。

だが、嬉しいだけで夢が叶うわけではない。

当たり前だが、夢に向かって愚直な努力が必要だ。

毎日、へとへとになるまで訓練し、22時の消灯前になると、
ウトウトしてくる日もあった。

そんな時は、延灯しないで寝たかった。

もちろん、延灯しないという選択もあったが、
自分に負けるのが嫌だった。

一度、自分に言い訳をしたら、ずっと逃げ続けるような気がした。

毎日、教官室で消灯後に勉強するということは、
私にとって、本当に「進学したい」という夢を持つことが
許されるかどうかを試された時期だった。

この時は、肉体的な辛さから、勉強を続ける事への
大変さを味わったが、それはまだ、序の口だった。


本当に大変だったのは、教育隊を卒業してからだった。


教育隊を卒業し、その後の専門教育機関に進んでからは、
驚くほど自由な時間が増え、誘惑が増えた。

部隊に配属されてからは、さらにそれが増した。

自由な時間が増え、基地の外に下宿を借りれるようになると、
勤務終了後は、皆は競うように基地の外に出ていった。

同僚が下宿を借り、車やバイクを購入したりするのを見て、
本当に、心が葛藤の毎日だった。


「一層、大学なんて進学するのを辞めた方が楽なんじゃないか」

「努力しても、結局実現しなかったら、損なんじゃないか」


そう思いながら、官舎でひとり黙々と勉強するのが苦痛だった。

勉強がしたかったのに、いつの間にか義務感で勉強していた。

何のために、勉強するのか、何のために進学したいのか。


結局、私は何がしたいのか、そんな自問自答を毎日繰り返した。


夢を持つのは自由だし、夢を持たないなんて、人生が味気ない。

でも、夢を持つ以上は、その実現に向けて愚直な努力が必要だと
初めて理解した。

結局は、自衛隊を辞めた後、大学には進学したが、
当初、思い描いていた形での進学ではなかった。

だが、この時の自問自答や苦しみが無かったら、
きっと大学には進学しなかっただろう。

その意味では、苦しかったが、苦しんだだけ、
自分の夢を精査することが出来た。

夢や希望を持つことは、ある意味において、
自分の人生に責任が伴うことが解かった。

そして、この時の、辛くても机に向かう習慣は、
自分の人生のあらゆる場面で、後々本当に役に立った。


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管理人 琴峰 一歩      プロフィール

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現在、アラフォーの年齢になった。

10代は、いじめや人間関係に悩み、
苦しみ続ける孤独な毎日だった。

20代では、不安定な経済力や仕事で苦労し、不安な毎日を過ごした。

30代に入り、無職も経験した。
本当に人生を変えたかった。

人生を変える為に、やりたい事、 挑戦したい事は沢山あった。

ただ、それに反比例して、
どうしようもなくお金が無かった。

だから、お金を使わずにできる事。

自分自身の考え方を変えた。

まず、悩み続けた不安定な経済力、雇用関係が変わった。

次に、苦手だった人付き合いが
嘘のように活発になった。

長い間、変わらなかった現実が
突然ガラリと変わった。

今は、新しい人生の夢に向かい、
挑んでいる。

そして、それは少しづつ実現中だ。

 

 

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