あやしい会社


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「電話応対する若い営業」[モデル:ozpa]

数年前から、ブラック企業という名前が広く知られるようになった。

職場環境も、サービス残業は当たり前だったり、
法令順守なんて無いに等しかったり、等々。

今でも、時々思い出したりするが、給料の良さに釣られて、
色々な商品を売る会社で働いたことがある。

当時、非正規だったので、実力次第で正社員途用ありで、
なおかつ高給を謳っている営業事務の募集に応募した。

仕事内容は、TELアポで色々な商品を紹介するという程度しか
書いてなかった。

その会社は、誰でも知っている大手企業の社名の入ったビルに
テナントとして入居していた。

一見すると、その会社は、大手企業の子会社か、関連企業かな?と
勘違いするような、曖昧なスタンスをとっていた。

会社の面接では、面接官から何度も同じことを聞かされた。

曰く、「私達は、人に喜んでもらえる商品を紹介しています」と。

何のことはない、電話をかけて、相手に適当なことを言って
馬鹿高いモノを売りつけるだけの会社だった。

 

それも、必要な人に、必要なものを売るなら理解できる。
なぜなら、相手に喜んでもらえるからだ。

「こんな商品が欲しかった!」となるからだ。

 

でも、そうではなく、まったく関係ない人に、関係ない商品を

売ったりすることに、驚くと同時に、恐怖を感じた。

 

そこでは、朝、出勤してきたら、まず分厚い電話リストを渡され、
偽名を名乗って、片っ端から電話をかけるのである。

もう、今の世の中では難しいが、20年程前なら、
そういった電話勧誘は可能だった。

初出勤の日のことは、今でも覚えている。

オリエンテーションと称して、まず偽名を作らされた。

ちょうど、その日は朝から雨が降っていたため、水谷と決められた。

名前が決まったら、次はどういった電話トークを使うかを、
実際に社員が電話をしている部屋で聞くように言われた。

早速、電話を架けまくっている先輩社員の横に座り、
会話の内容に聞き耳を立てた。

実に巧みに相手に商材の売り込みを行っていた。

「もしかしたら、この会社はヤバいんじゃないかな?」

その時点で、私は相当危機感を持っていた。

やっていることは、単なる営業だが、偽名を名乗る時点で、
アウトなんじゃないかと思った。

 

リストの電話番号に乗っている家庭に電話し、
さも関係者のようなトークで切り込むのである。

「去年、ご主人がお勤めの会社からのご依頼で、

社内行事の際の写真を撮らせていただいていたのですが、
お宅から申し込みが無かったので、期限もありますし、
心配になって連絡させていただきました。」とか、

または、

「私共の商品をお使いいただいている、〇〇さまより
ご紹介いただきまして、本日はご連絡させていただきました。」

その先輩社員のトークは今でも覚えている。

社内行事の写真なんて、もちろんウソなのだ。

紹介した〇〇なんて名前も、人名百科で上位にくるような
ありふれた名前を使うことで、相手は「あれ?○○さん?」と
勝手に勘違いしてくれるのだ。

そこから話始め、最後は馬鹿高い商材を売りつけるのだ。

正直、先輩社員のトークを聞いていて、
もう帰りたくて仕方がなかった。

結局、その会社は10日程で辞めた。

まともに電話をしたのは、最初の日の数回で、
あとは電話をするフリをし続けた。

当然、まったく成果が出ないので、上司に心配され、
色々とアドバイスされ、こちらも神妙な態度で聞くふりをし続けた。

辞めてから、しばらくは電話をみるのも嫌だった。

お金につられ、くだらない会社と関わったことを後悔した。

だが、一つだけ良かったことがあった。

自分の家に架かっている、電話勧誘の内情というか、
受話器の向こう側を知ることができた。

それ以来、私は、どんな事情があっても、人を騙すような事や、
ウソをつくような事はしないと、心に誓った。


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管理人 琴峰 一歩      プロフィール

Revtank Outtakes

現在、アラフォーの年齢になった。

10代は、いじめや人間関係に悩み、
苦しみ続ける孤独な毎日だった。

20代では、不安定な経済力や仕事で苦労し、不安な毎日を過ごした。

30代に入り、無職も経験した。
本当に人生を変えたかった。

人生を変える為に、やりたい事、 挑戦したい事は沢山あった。

ただ、それに反比例して、
どうしようもなくお金が無かった。

だから、お金を使わずにできる事。

自分自身の考え方を変えた。

まず、悩み続けた不安定な経済力、雇用関係が変わった。

次に、苦手だった人付き合いが
嘘のように活発になった。

長い間、変わらなかった現実が
突然ガラリと変わった。

今は、新しい人生の夢に向かい、
挑んでいる。

そして、それは少しづつ実現中だ。

 

 

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