高校を卒業して、自由に生きていくために最初に選んだ職場は、
自由とはかけ離れた超管理社会の自衛隊だった。
どうして、そんな真逆な世界を選んだのかといえば、
二つの理由があったからだ。
一つは衣食住の確保、もう一つは進学費用を貯められることだった。
当時の自衛隊は、今ほど災害派遣で世間から脚光を浴びるような
そんな時代ではなかった。
私自身も、自衛隊に対してそんなイメージも持っていなかったし、
さりとて国防とか、そんな大それた意識はなかった。
むしろ自分の生活防衛や将来のための人生防衛のほうが強かった。
だから、最初から数年間の任期を勤めあげた後、
結構な金額の退職金と、その間に出来る限り貯金をし、
好きな場所に行って、進学しようという算段だった。
入隊して最初の三か月間は新隊員としての訓練期間で、
それはそれは本当に辛い毎日だった。
ここでは、言われたことだけを忠実に実行していれば、
居心地は良かったが、余計なことを考え出すと、
メンドクサイ組織だった。
分単位で管理され続ける厳しい訓練期間が終わり、
部隊に配属されると、今度は先輩隊員との人間関係に悩まされた。
訓練期間はどんなに厳しくても、周囲は同期隊員ばかり
というのは、それなりに気心も知れてくると
多少は過ごしやすい部分はあった。
だが、同期と違って先輩隊員はそうはいかなかった。
結局、先輩隊員から暴力の洗礼を受ける羽目になった。
あとから聞いた先輩隊員の暴力の理由は、
自分勝手で、とうてい納得出来るものではなかった。
暴力を受けたことで大怪我を負い、それが原因で満期を待たず、
自衛隊を除隊し、行くところがなかったために、
二度と帰りたくなかった地元へ帰ることになった。
丁度、二十歳になる少し前だった。
琴峰一歩のプロフィール Vol3
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