
逆張り思考を続けた結果、取り巻く環境も、関わる人間も、
そして、人生も大きく変わった。
今でも、時々不思議に思う事がある。
まさか、私のような人付き合いが苦手な奴が、
誰かと約束して出かけるようになるとは、夢にも思わなかった。
誰かと約束して出かけるようになるとは、夢にも思わなかった。
それが今では休日になると、当たり前のように
普段より早起きして色々な催しに出かけることが増えた。
普段より早起きして色々な催しに出かけることが増えた。
誘われる内容は、狂言や能、歌舞伎に演劇、旅行など色々だが、
一番多いのは、茶道の茶事・茶会に呼ばれることだ。
一番多いのは、茶道の茶事・茶会に呼ばれることだ。
昔、非正規で働いていた頃は、社員の尻ぬぐいや、
休暇の穴埋めのために、文句を言いながら休日に出勤し、
帰宅したらビールを飲んでテレビを観ながら寝る。
休暇の穴埋めのために、文句を言いながら休日に出勤し、
帰宅したらビールを飲んでテレビを観ながら寝る。
それが、以前のありふれた日常だった。
それから考えれば、同じ休日に早起きするのも、
外に出かけるのも、全く状況も内容も変わった。
外に出かけるのも、全く状況も内容も変わった。
今までの人生では、考えも及ばなかったような非日常の世界を
当たり前のように普通に体験するようになった。
当たり前のように普通に体験するようになった。
この日も、早朝から熱めのシャワーを浴び、身支度をしながら
初めて茶事に招かれて参加した時のことを思い出しては、緊張していた。
初めて茶事に招かれて参加した時のことを思い出しては、緊張していた。
初めて訪れたその場所は、まるで戦国モノの
大河ドラマに出てくるような世界だった。
大河ドラマに出てくるような世界だった。
茶道具から、調度品まで、ありとあらゆるものが
時代を感じさせるものばかりだった。
時代を感じさせるものばかりだった。
差し出された茶器が、古すぎて値段が付かないと聞いたとき、
本当にそんなものが存在するのかと思うと、
実際に持つ手が震えて抹茶の味なんてわからなかった。
本当にそんなものが存在するのかと思うと、
実際に持つ手が震えて抹茶の味なんてわからなかった。
緊張しすぎて茶碗を右に回したか、左だったかなんて記憶にない。
作法もヘッタクレもなかった。
作法もヘッタクレもなかった。
とにかく、落として割らないように、必死だった。
今でも鮮明に覚えているのは、その事だけだった。
今でも鮮明に覚えているのは、その事だけだった。
そのあとは、どうやって茶事が終わったのか、
どんな会話をしていたのか、ボンヤリしていて記憶が曖昧だ。
どんな会話をしていたのか、ボンヤリしていて記憶が曖昧だ。
それほど、最初の印象が強烈すぎたのだ。
だからであろうか、未だに参加する時は、
何とも言えない緊張がある。
何とも言えない緊張がある。
こればかりは、慣れとは違うようだ。
あと、もう一つ、忘れる事が出来ない理由があった。
いつもその事を思い出しながら、忘れ物はないか何度も確認する。
帛紗、茶扇子、懐紙・・・懐紙は残り少なくないか・・
黒文字(和菓子を食べるときの大きな楊枝)も持ったよね・・・
つい、何度も帛紗ばさみ(道具をいれる袋)の中を
確認してしまう。
確認してしまう。
その理由とは、初めての茶事は、何も道具を持たずに行くという、
前代未聞の大惨事をやらかしたからだった。
前代未聞の大惨事をやらかしたからだった。
茶事にあるまじき非常識さを発揮して、一気に名前をおぼられた。
ただし、不幸中の幸いというべきか、たまたまその日は、
極めて出席者が絞られた、極小人数の仲間内だけでの茶事だった。
そして、私が超初心者であることも、みんな知っていた。
極めて出席者が絞られた、極小人数の仲間内だけでの茶事だった。
そして、私が超初心者であることも、みんな知っていた。
結果的に、大人数の茶会と違って大々的に恥をかくのは防ぐことは
どうにか防ぐことが出来た。
とにかく、非常識と無礼をひたすらに詫びるしかないと、
どやされるのを覚悟して、茶事のあとの懐石に臨んだ。
どやされるのを覚悟して、茶事のあとの懐石に臨んだ。
だが、懐石では「道具も持たないなんて!」と大笑いされた。
これが切っ掛けになり、一気に茶事のメンバーの雰囲気に
溶け込めた。
溶け込めた。
昔の私なら、この時点で心が折れて終わっていたと思う。
だが、今は失敗なんて何のそのだ。
だが、今は失敗なんて何のそのだ。
むしろ、名前を覚えてもらってラッキーくらいに開き直った。
今でも、私のやらかしを知っているメンバーの何人かは、
未だに会えば必ずといってよい程、私の顔を見てニヤッと笑う。
未だに会えば必ずといってよい程、私の顔を見てニヤッと笑う。
そして、さも「道具は持ってきているか?」といわんばかりに、
スーツの胸ポケットを2度3度と、トントンと叩く。
スーツの胸ポケットを2度3度と、トントンと叩く。
こちらも、当然のように「持ってますよ!」というように
自分の胸ポケットの部分を、トントンと叩いて答える。
自分の胸ポケットの部分を、トントンと叩いて答える。
まるで、儀式のように、特に言葉を交わすことも無く。
スパイの暗号のように自分の胸を叩きながら「よし!」と
お互いがコッソリと親指を立てる。
お互いがコッソリと親指を立てる。
そして、小さな正方形のにじり口と呼ばれる板戸を
身を屈むように潜り抜けて茶室に入る。
視界に入る光量が一気に減少し、空気がガラリ変わる。
そこは照明もなく、薄暗く狭い非日常の空間だ。
そこは照明もなく、薄暗く狭い非日常の空間だ。
何度体験しても緊張するし、戦国武将になった気分になる。
板戸ひとつ隔てて、一気に時間を遡った感覚に
何だかタイムトラベルをした気分になる。
何だかタイムトラベルをした気分になる。
こうして、また非日常の一日が始まる。
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