人は見かけによらない


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「宮古島名物オトーリ前の様子」の写真

働き出して1ケ月が過ぎ、最初の給料日の日、
オーナーとママから直接給料袋を渡された。

「正直、勤まるか心配な部分もあったけど、1ケ月間ご苦労さま」
お店で働いてから、初めて受け取った給料日の事は忘れられない。


今でも、給料日から何日か後だったか、記憶は定かではないが、
休みの前の日の事だったのは覚えている。

マネージャーから、突然言われた。
「今日は店が終わるまで、居といてくれな」


仕事も慣れてきたころだった。


閉店後の片付け方でも教えてもらえるのかな?といったような事を
考えていたような記憶がある。

店が終わった時、待っていたのは店の片付けではなかった。

ママ、マネージャーとホールスタッフのメンバー、ホステスのNさん、
それにNさんと親しいホステスの7.8名だったと思うが、
私の歓迎会を開いてくれた。


ママの音頭で乾杯をした後、開口一番、Nさんが言った。

「ママから聞いたよ!自分で金払って学校に行ってるんだって?
偉いじゃん!頑張りな!」

マネージャーとNさんが歓迎会を企画してくれたことを知った。

楽しいことが好きなママがそれに便乗し、Nさんがみんなに声をかけて
実現したとの事だった。

私はジュースを飲みながら、みんなは酒を飲みながら
それぞれの身の上話に花が咲いた。

何となく、それまでは自分一人だけが不幸だと思っていた。

ママも、マネージャーも、Nさんにも、みんな色々な過去や
色々な問題を抱えている事が判った。

もちろん、他のホステスも同じだった。


イカツイ顔のマネージャーが私と同じいじめられっ子だったのは
本当に驚いた。

Nさんは不登校だったのを知った。

みんな一緒なんだと分かった時、心の距離が縮まった。


「正直言ってよ~、お前がいつ辞めるんじゃないかって
ずっと思っていたけど、なかなか根性あるじゃん!」

マネージャーに言われた。


「アンタの前に来た子なんて、1週間でバックレたしね~」
ホステスのJさんが言った。

Jさんは、初日にNさんに叱られた時に横に座って、
手をヒラヒラさせていたホステスさんだった。

「よく毎日あれだけN姉にギャーギャー言われて耐えたよね。
私なら絶対無理!」

Jさんはよく笑う明るい女性だった。


「僕もいじめられっ子だったし、そういうの結構慣れてるんです。」

私がそう答えると、マネージャーが言った。
「やっぱりな、俺と同じ奴だと思ったよ!」

そういうと、Nさんがすぐさま私の口真似をした。
「す・・すみません!」
ドッとみんな笑った。


「ここでは、お前の事いじめる奴なんて誰もいねーよ」


「理由があってお前の事をみんな叱るんだし、
いちいちオドオド謝り過ぎなんだよ。お前は!」

そういうと、マネージャーは私の胸を拳で叩いた。

その日は、かなり遅くまでワイワイと宴会は続いた。
最後、店を片付けて帰る時は、もう朝が近かった。


「ま~みんな色々あるけどさ、私もこんな性格だし、
まあお互い頑張ろう。」
そういうと、Nさんは軽く肩パンしてきた。


マネージャーも、背中を叩いてきて、
「今度からホールも手伝ってもらうし、気合入れていこうな」


ママや他のホステスは、タクシーで帰っていった。
誰かに何かをしてもらうような事なんて、久しくなかった。

だから、この日の事は今でもずっと覚えている。

人は見かけによらない、つくづく考えさせられた日だった。

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管理人 琴峰 一歩      プロフィール

Revtank Outtakes

現在、アラフォーの年齢になった。

10代は、いじめや人間関係に悩み、
苦しみ続ける孤独な毎日だった。

20代では、不安定な経済力や仕事で苦労し、不安な毎日を過ごした。

30代に入り、無職も経験した。
本当に人生を変えたかった。

人生を変える為に、やりたい事、 挑戦したい事は沢山あった。

ただ、それに反比例して、
どうしようもなくお金が無かった。

だから、お金を使わずにできる事。

自分自身の考え方を変えた。

まず、悩み続けた不安定な経済力、雇用関係が変わった。

次に、苦手だった人付き合いが
嘘のように活発になった。

長い間、変わらなかった現実が
突然ガラリと変わった。

今は、新しい人生の夢に向かい、
挑んでいる。

そして、それは少しづつ実現中だ。

 

 

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